路線図18

人物私が作りました

山田やまだ 将史まさふみ

路線図18の企画・デザイン・販売に至るまで全て1人でやっています

鉄道旅行作家<旅行タレント>

1993年4月18日生(28歳)

大阪府大阪市出身 現在は東京都荒川区在住

中学1年生(12歳)のとき本格的に鉄道旅行をしはじめ
高校3年生(18歳)の2011年12月、JR線の99%に乗車達成
※乗っていないのは同年以来豪雨災害で運休中の只見線のみ

全都府県全振興局踏破はもちろん、世界45ヶ国を歴訪

より詳しいプロフィールはこちらもご覧ください
オレンジプロダクション

あずさと「路線図18」

"途切れる地図"は面白くない!

幼いころ、家にあった道路地図をよく眺めていました。大阪出身なもので関西の地図だったのですが、巻末の広域地図を見ると北は福知山線の古市、西は山陽本線の西明石、東は東海道本線の野洲、南は紀勢本線の海南あたりが掲載範囲の端っこでした。その先はどうなっているのかと思いを馳せたものです。

近所を移動する場合はともかく、今の時代、鉄道の全国路線図を見る機会はおそらく紙の時刻表の巻頭にあるものぐらいしかないはずです。しかも紙の時刻表などもはや鉄道好きか、旅行業の関係の方ぐらいしか買う人はいません。一方で鉄道好き、特に全線乗車を目指すようないわゆる"乗り鉄"派向けにはそういった地図帳も販売されています。しかしいずれにしても複数のページに分かれており、ぱっと全体を見渡すようなタイプの路線図はどこにもありません。全部を見渡せる地図はとても面白いのに……。世界地図は教育向けにごくありふれているのにも関わらず、です。

過去には全国路線図も制作されていた

少なくとも近年、ポスター状の1枚の紙に全線全駅が掲載されたようなタイプの路線図は販売も制作もされておらず、「路線図18」は日本唯一を自負しています(制作過程で知ったことですがポスター状ではないものは存在します)。しかし今まで全く存在しなかったかというとそうではなく、かつては毎日新聞社が新聞の付録として国鉄の全国路線図を制作していました。

毎日新聞社の全国路線図

毎日新聞愛読者センターに聞くところによると、明治末期より発行が始まり大正時代にはこういった路線図が多数制作されていたそうです。当然インターネットやデジタルデバイスなど存在しませんから、こういった紙の情報が非常に重要だったわけです。毎日新聞社では不定期で無料の付録として発行していました。しかし、国鉄がJRへと民営化して間もなく、このような全国路線図は姿を消しました。ほかの手段で情報を得られるようになってきたことももちろんですが、多数の地方線区が廃止・転換されたこと、また地区ごとに分割され統一した全国路線図発行の機運が下がったことなどが理由だと思われます。

どこにもない「読める路線図」を

「路線図18」を制作するにあたり、『全駅をひらがなで掲載する』ということは早い段階から考えていました。中学1年生で鉄道旅行をし始めたときを思い返してみれば、駅名はもちろん路線名ですら読めないものがいくつもありました。旅をするうちに、駅名標を見たり調べたりし多くの駅名の読み方を知るようになりました。

われわれ日本人は、母国語である日本語ですら、読み方を知らなければ発音できません(もちろん英語やほかの言語にも"特殊な読み"は存在するのですが)。特に地名ともなれば不思議な読み方をするものがいくらでもあります。しかも困ったことに、地名と駅名の表記が同じにも関わらず読みは異なるというところがいくつもありました。

「米原(滋賀)」 町名は「まいはら」駅名は「まいばら」→現在は町名(市名)を「まいばら」に

「旭川(北海道)」 市名は「あさひかわ」駅名は「あさひがわ」→現在は駅名を「あさひかわ」に

あくまで私見ですが、これらはどうやら国鉄の悪い癖で、本部にいる駅名を決める人間は現地のことを全く無視して自分たちの頭の中で思いついた読みを駅名につけていたようなのです。

「路線図18」ではスイッチバックやループ線の線形を掲載していますが、福井県の北陸本線・新疋田~敦賀に鳩原ループというループ線があります。

鳩原ループ

かつてこの場所に鳩原(はつはら)信号場があり、それでこのループ線も鳩原(はつはら)ループと呼ばれているのですが、実はここの地名は「はとはら」と読むのが正解なのです。

鳩原ループ

ではなぜ信号場の名前が「はつはら」になったのか。やはり私見ですが、ほかのところに鳩原をはつはらと読む地名があり、同じだと思ってつけたのではないかと考えています(現在では、福島県南相馬市に南鳩原を「みなみはつ"ぱ"ら」と読む地名があります)。

話はそれてしまいましたが、この「鉄道世界の読み」を誰でも楽しめるようにしたい。子供でも、大人でも、初心者でも、マニアでも。知識によらず誰でも楽しめる路線図を。そう思ってこの「読める路線図18」を作りました。

B判サイズの紙の加工会社が全国に3社しかない!

「路線図18」は企画や構想からデザインはもちろん、営業、そして時には販売に至るまで全てわたくし山田将史1人の手で回しています。けれどどうしても私ができないところがあり、それだけは注文して制作をお願いしています。それが「印刷」と「折り加工」です。

制作にあたり、紙のサイズについてはいろいろな検討を重ねました。具体的には、全駅掲載するにはどれくらいの大きさが必要なのか、そして折り加工も含めてどれくらいの値段で作成できるのか。一般的によく使われる紙の大きさといえばA4やB5でしょうか。「路線図18」はB1サイズに行きつきました。縦が約70cm、横が約1メートルの大きさです。B1のことを「B全」とも言い、更にその上にB0(B倍)というサイズがあります。A判でもB判でも、どちらも全から倍になると一気に値段が跳ね上がります。

そして、これは印刷会社さんが制作にあたり調べてくれたことなのですが、A判の折り加工ができる加工会社さんは多数存在するのですが、B判のこのような大きさに対応できる会社が現在では減ってしまい、なんと全国に3社しか存在しないとのことなのです。詳しくは存じ上げないのですが、今回は埼玉にある加工会社さんにお願いすることになり、すでに商品化されているとある路線図と同じ折り方を採用することにしました。技術と実績のある折り方を選ばせてもらったわけです。ちなみに、その結果表面と裏面を上下反転させてデザインすることになりました。

毎年継続して発行することを目指します

駅や路線の情報は毎年変わっていきます。「路線図18」も毎年継続して発行できるよう、頑張りたいと思っています(つまり頑張ってたくさん売って、来年の印刷費を確保したい!ということです)。個人的にはこの全国路線図は何十年かしたときに改めて価値を持つことになると思っています。振り返って過去の路線図を見たとき、年ごとにどのように鉄道網が変わっていったか、それを将来楽しむために、毎年毎年作り続けていきたいと思っています。

そして来年(2022年)3月は青春18きっぷ発売40周年です。「路線図18」はまず最初青春18きっぷでの旅行を楽しくすることをテーマに企画したものですから、2022年には「復刻版風」として「1982年版路線図18」を制作したいと思っています。今とはまったく路線網が異なります。ある人にとっては新鮮な、ある人にとっては懐かしい、そんな路線図になるはずです。